災害時に発揮される消防団の力
令和4年9月14日に発生した台風第14号。17日午前3時には大型で猛烈な強さまで発達し、18日午後7時頃、非常に強い勢力で鹿児島県に上陸した後、19日の朝にかけて九州を縦断しました。この台風による暴風と大雨によって、県内各地で甚大な被害が発生したのは記憶に新しいところです。今回は、このような災害時に消防団の力がいかに重要かを、美郷町消防団の動きにスポットを当てて紹介します。
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災害時に発揮される消防団の力<br> <br> 令和4年9月14日に発生した台風第14号。17日午前3時には大型で猛烈な強さまで発達し、18日午後7時頃、非常に強い勢力で鹿児島県に上陸した後、19日の朝にかけて九州を縦断しました。この台風による暴風と大雨によって、県内各地で甚大な被害が発生したのは記憶に新しいところです。今回は、このような災害時に消防団の力がいかに重要かを、美郷町消防団の動きにスポットを当てて紹介します。<br><br>
話を聞いたのは
美郷町消防団
甲斐文雄団長
勤務している椎葉村の建設会社が令和2年の台風第10号で被災した経験から、「台風・大雨には早めの避難が第一」と語る。
ーまずは美郷町消防団について教えてください。
甲斐団長 美郷町消防団の定員は450名で、現在はそれを満たしています。令和5年1月現在の町の人口が4488名ですから、町民の1割が消防団員ということになります。
ー昨年の台風第14号での被害は相当なものだったそうですね。
甲斐団長 はい。降り始めからの雨量が1000ミリ近くに達し、町内各所で土砂崩れが発生しました。また、40戸で浸水被害も発生。台風が過ぎ去ってからも停電や断水が続いた地域があるなど、未曽有の災害となりました。正直なところ、ここまでの被害は予想していませんでした。
ー地震と違って、台風の場合は事前の対策が可能なわけですが、どのような対策を?
甲斐団長 17日の時点で各地区の自主防災組織と連携を図り、早めの避難を呼びかけていきました。避難行動要支援者がどこに住んでいるのかを把握できているなど、地域とのつながりを活かして必要なところに的確な声掛けができました。人的被害が、避難中にケガをされた方1名ですんだのも、そのおかげだと思っています。
ー台風は18日から19日にかけて猛威を振るいましたが、その間はどんなことをされていたのですか?
甲斐団長 台風の通過中は危険なので外で何かをしていたわけではなく、詰所に待機したり、避難所での活動に当たったりしていました。
台風が過ぎ去った20日の朝から地区内を巡回して被災状況を把握していったのですが、道が分断されていたり、携帯電話が一時つながらなかったりしてかなりの時間を要しました。
ー復旧活動にもかなりの時間と労力が必要だったそうですね。
甲斐団長 24日に町内すべてで孤立が解消されるまで、延べ660名が復旧・清掃活動を行いました。なかでも、孤立集落へ生活物資を届ける作業は、一杯に詰まったザックを背負って道なき道を歩くというハードなものでしたが、団員たちはしっかりと任務を遂行してくれました。
美郷町には消防本部や消防署があるわけではないので、地域の安心・安全は私たち消防団にかかっています。団員のみんなはその点をしっかりと理解してことに当たってくれました。
ーそれは頼もしい限りですね。
甲斐団長 災害が少し落ち着いた頃に町民の方から電話があったんです。「消防団のみなさんがいてくれて本当に助かったので、ぜひみなさんにお礼を伝えてください」という内容でした。私たち消防団員としては当然のことをやっていただけなのですが、そういった言葉をいただけるとやはりうれしいですよね。
それと、復旧作業や清掃活動を行う際に、地域の方々が炊き出しを行ってくれたり、差し入れをくれたりしたのですが、消防団は地域の方々に支えられていることを再認識することができました。
ー今回の台風災害への対応から見えてきたことはありますか?
甲斐団長 令和2年の台風第10号災害時に、椎葉村の村長が、「うちには安全な場所は一つもない」と話していたのですが、今回、美郷町も同じなのだということが身に染みました。そんな場所だからこそ消防団の力は欠かせません。今後も、地域から信頼される消防団でありつづけられるよう頑張っていきたいと思います。