次世代への語り継ぎ

[長田小学校の取り組み]

次世代への語り継ぎ

親から子へ、子から孫へ。そうやって語り継がれてきた地域の伝承―。
現在の三股町における語り継ぎの実態を調べた。


長田小学校の取り組み

6月13日、長田小学校(山本昭藏校長、21人)は、同校音楽室で「本の読み聞かせ」を実施した。児童、教職員合わせて30人が参加。町立図書館の司書3人が「読み聞かせ」の話者になり、三股町内に伝わる「河童伝説」などを中心に、5編の昔話や童話などが次々と披露された。
途中、方言を使った語りのほか、絵や人形などを使った「河童についての説明」や手遊びなどもあり、児童たちは興味津々といった様子で話に聞き入っていた。
続いて6月30日には、同校5年生児童4人を対象とした「河童伝承の場所巡り」が行われた。先日の「読み聞かせ」の中で紹介された、同地区内の河童伝承が残る場所など(「長田峡」「仮屋・御崎神社」「走持大明神」)について、地区の高齢者4人が案内役となり、児童たちと実際に訪問。各場所で、その土地にまつわる歴史や文化などの紹介があった。
前述の行事二つについて、同校児童に感想を聴く。
「河童に興味を持ちました。自分で、もっと調べてみたいと思います」(押領司崇之君=長田小5年=)
「怖いけれど、本物の河童に一度会ってみたいなと思いました」(黒木愛羽君=長田小5年=)
子どもたちの反応は上々だ。
ところで、そんな同校における教育において、特に力を注いでいる分野は何なのか。「『人となかよし』『土となかよし』『言葉となかよし』を合言葉に、将来にわたり、ふるさとを大切にする人になってほしいとの思いで、日々、子どもと向き合っています」
山本校長(60)はにこやかに答えてくれた。さらに続ける。
「長田小では、地域の方にお願いして、郷土芸能伝承活動、コメ作り、昔の遊び伝承などを行っています。地域の皆さんとの絆を築くことで、児童の郷土を愛する心がさらに深まると確信しています」


郷土の伝承を後世に

ここに1冊の本がある。表題は、『三股の民話と伝説』(1994年発行)。中を開くと、三股町内に伝わる民話・伝説が全12章に分けられ紹介されている。第2章で取り上げられているのは、今回の広報特集テーマでもある「河童伝説」。中には『三股町史』に載っていない話まで紹介されていて興味深い。
この本の編者・轟木次男さんは、ことし4月27日、敗血症により亡くなった(享年90歳)。彼はどんな思いでこの本を執筆したのだろうか。次男さんの長男・修さん(63)=轟木在住=を訪ねた。
「ちゃんと答えられるか分かりませんが…」と申し訳なさそうに話す修さん。次のように続けた。
「社会科の先生をしていた父は、定年後の趣味として、郷土史や民話の聞き取り調査などを精力的に行っていました。さらに地域活性化のため、そして三股の子どもたちのためにと、夜遅くまで慣れないワープロに向き合って文章を打ち込み、さまざまな本を制作しました。?三股の民話と伝説?は、胃がんの手術をした父が一いち念ねん発ほっ起きして作ったものです。出版した本は町内各小学校・町立図書館などに寄贈しています。亡くなった父の願いをかなえるため、ぜひ多くの方に、父の本を読んでいただきたいですね」


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