自然を収奪し、人間の豊かさを追求し続けてきた現代社会。
気が付けば、気候変動や生物資源の枯渇など人類の生存にかかわる状況に直面していた。
ユネスコエコパークは、世界が一丸となってこの危機を乗り越えていくための試みの場。
中でも世界の注目を集めているのが『綾ユネスコ エコーパーク』だ。
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自然を収奪し、人間の豊かさを追求し続けてきた現代社会。<br>気が付けば、気候変動や生物資源の枯渇など人類の生存にかかわる状況に直面していた。<br>ユネスコエコパークは、世界が一丸となってこの危機を乗り越えていくための試みの場。<br>中でも世界の注目を集めているのが『綾ユネスコ エコーパーク』だ。
2012年7月11日、宮崎県の綾地域が日本では32年ぶり、5か所目のユネスコ エコパークに登録された。
綾地域の中心となる綾町は、宮崎県の中央部に位置する人口7千人あまりの町。面積の80%を森林に覆われる、山間部によくある小さな町が、なぜ世界から注目されることになったのか。
その大きな理由が、町の大部分を占める森林にある。この森林、「照葉樹林」と呼ばれる森で、これほどの面積が残っているのは世界的にも珍しく、大変貴重なものなのだ。
綾町では、半世紀以上にわたって、この照葉樹林を守り、自然と共生するまちづくりが行われてきた。そのひとつが、町の条例でも定められ、全長をあげて取り組んでいる有機農業だ。化学肥料や農薬の使用を限りなくゼロに抑えて安心・安全な農作物を作り、それを流通させることで利益を生み出す。つまり、自然環境にダメージを与えることなく経済的な自立を実現しているのだ。県内外から高い評価を受け、『綾の野菜』というブランドとしての地位を確立している。このような長年にわたる取り組みが「地域の自然と文化を守りながら地域社会の発展を目指す」というユネスコエコパークの理念に合致したわけだ。
先進的ともいえる綾のまちづくりの始まりは、1966年に就任した郷田實・前町長の時代にさかのぼる。当時は町の経済状況が最も厳しい時期で、クラフトパルプや薪炭用に照葉樹林を伐採する計画も持ち上がった。だが、この計画に疑問を持った郷田前町長は、「一坪菜園運動」や「木工のまちづくり」など、自然の恵みを生かしたさまざまな産業振興を展開。環境を守りながら、循環型で持続的なまちづくりの形を作り上げた。
この自然共生型の取り組みは、今日、しっかりと町の人々の間に根差している。
「ユネスコの本部から担当者が視察に訪れたときのこと。最初はどんな田舎なんだろうといった態度だったんですが、帰るころにはもしかしたら世界のモデルになるかもしれないと興奮していましたよ」とは、綾町照葉樹林文化推進専門監で、エコパークの登録にも尽力された河野耕三さん。
「エコパークの先進地といわれるドイツやオーストラリアの取り組みを紹介してもらっても、綾ではすでに当たり前のことばかりなんです」。
自然と人間との共生。人類の存続にもかかわるこの大きなテーマのヒントがこの町にあるのかもしれない。
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