宮崎市で輝いている人を紹介する「キラリ! 宮崎人」。今回は、牛の蹄(ひづめ)を削り、形を整える職人、牛削蹄師(ぎゅうさくていし)の西薗畩美さんです。

削蹄師になったきっかけ

[牛の健康の維持に欠かせない仕事]

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削蹄師になったきっかけ

 牛削蹄師という、一般には聞き慣れない仕事を約30年にわたって続けている西薗さん。そのきっかけは、師匠との出会いにありました。
 「もともと肉用牛の生産業と家畜商をやっていたのですが、牛の健康管理には削蹄が大事だと感じていました。そんな時、後の削蹄の師匠となる方に出会い、誘われたんですよ」
 3年間の修業を経て、34歳で削蹄師の認定試験に合格。以来、たくさんの削蹄を経験する中で、生産業だけでは気付くのが難しかった牛の体調不良をいち早く察知し、対応できるようになったそうです。


牛の健康の維持に欠かせない仕事

 「ひづめが伸びっぱなしだと、牛がストレスを感じ、体重が増えなかったり、体型の維持が難しくなったりするだけでなく、感染症にもかかりやすくなるなどマイナス面ばかり。健康の維持には削蹄が欠かせないんです。いつもやりとりしている畜産農家の皆さんにも、年に2回は削蹄することをお勧めしているんですよ」という西薗さん。削蹄を通じて、畜産農家の皆さんとコミュニケーションを取りながら、大切な牛の体調を整える手伝いをしています。
 1頭の削蹄にかかる時間は約40分。西薗さんは年間約300頭の牛を削蹄していますが、相手は生き物。常にけがの危険とも隣り合わせです。「昔、牛に顔面を蹴られ歯がごっそり飛んでいったことがありましたよ。一瞬でしたね。その日は痛くて何も食べられませんでした。それでも、牛のストレスを軽減してあげるためには、手を休めるわけにはいきませんよ」と、西薗さんは笑います。


削蹄は奥が深い、信念を持ってやり続けたい

 畜産関係者のみならず、宮崎県全体のあらゆる産業に大きな影響を及ぼした平成22年の口蹄疫。西薗さんは「最初に口蹄疫のニュースを知った時は言葉を失いました」と当時を振り返ります。
 「廃業を余儀なくされる仲間もいて、本当に心が痛みました。またいつ起きるとも分からないわけですし、いつも頭に置いて対応できるようにしています」 口蹄疫は終息したものの、復活できた農家は発生前の約6割。牛の数も減少している中、削蹄師も後継者不足が課題になっています。「県全体では90人ほどいますが、高齢化で辞める人も多いです。若手の育成が急務と考え、講習に出掛けるなど努力しています」
 削蹄師の仕事に誇りを持つ西薗さん。長年続けていてもゴールはなく、毎日が勉強だと話します。「これ以上奥が深いものはないように思います。命ある限り、体力のある限り、信念を持ってやっていきたいですね」


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