全国トップクラスの日射量を誇る宮崎。特に冬の日射量が多いことが、宮崎の野菜や果物のビタミンをパワーアップさせています。宮崎は全国の中でも1年を通して温暖で日照時間も長いのが特徴です。そのため、いろいろな農作物が1年を通して生産されています。温暖多照な気象条件を生かし、ビニールハウスを利用した定成栽培が盛んですが、きゅうりは全国シェアの1割、ピーマンは2割を占め、収穫量も全国でトップクラスです。
宮崎と他の地域との違いは、冬場の日射量の多さです。野菜のβ力口テンやビタミンCと日射量の関係は、農業関係の専門機関で研究されており、日射量が多いとβ力口テンやビタミンCが増える傾向にあることが分かってきています。冬場の日射量が多いことが、パワーあふれる野菜を作ることに役立つということが分かります。
冬場でも燦々と太陽光線が降り注ぐ宮崎の野菜や果物は、ビタミンパワーいっばいの、元気あふれるものばかり。 まさに"太陽の恵み"なのです。

大葉
食べ物を引き立てるものだからこそ、見た目の美しさにこだわり。

[黒川かぼちゃ
時間をかけて完熟。きめが細かく煮崩れしにくいと根強い人気。]

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大葉
食べ物を引き立てるものだからこそ、見た目の美しさにこだわり。

一枚一枚手作業で丁寧に収穫

ビニールハウス内に広がる美しい大葉の列。あたり一面に大葉の芳しい匂いが漂っています。(有)ファーム松田は、松田真和さんの父親の代から20年以上大葉を栽培しているべテランで、1年を通して大葉を収穫、出荷しています。大葉栽培で一番大変なことは、完全手作業だということです。
大葉は一枚一枚を丁寧に扱わないと、すぐに破れたり傷が付いてしまうのです。「大葉は農薬の規制が特に厳しいです。大葉は葉が薄い。だから、農薬の使用が少量でも、検査をしたら農薬が出てしまう恐れがあるため、ほとん ど使えません。そのため、害虫を寄せ付けないようにいろいろな対策を行っています」と松田さん。害虫を防除するために防虫ネットを使用し、特に害虫が多くなる夏場には、害虫の活動を抑えるという黄色蛍光灯を利用しています。
土作りも大切です。1年間の大葉作りが終わる 必ず土壌診断を行い、 足りなくなっている成分をチェックして、大葉に適した土中の割合を踏まえ、油かすなどを入れていきます。「土作りをして大葉をすぐ植えるということはしません。しばらく土を休ませるんですよ。そのことで大葉が害虫などにも強くなります。場所によっては1、2カ月休ませたり、もっと長く休ませたり、土の状態を見ながら決めますね」と松田さんはいいます。

料理の引き立て役としてのこだわり
大葉は短日植物で、夏から秋への日長の短縮を感知すると花芽を分化させます。ファーム松田では、長い期間収穫するために電照栽培を行ってい ます。夜に電気をつけることで、花が咲かないよ うにしているのです。 「大葉は、お盆前と年末が需要が多い。そのため、その時期に多く出荷できるようにしています。 低温にも結構強いんですが、寒い時期には暖房 を入れ、12?13度以下にならないようにしています」。 また、大葉は10枚単位できちんとそろえた状態で出荷します。葉脈が少し曲がっているだけでも出荷できません。「他の 食べ物を引き立てる脇役だからこそ、真っ直ぐじゃないといけない。また触って葉が薄いと感じるものも、日持ちしないから出荷できないんですよ」と松田さん。 生産者でなければ分からない細部までのこだわりが、品質の良さにつな がっています。


黒川かぼちゃ
時間をかけて完熟。きめが細かく煮崩れしにくいと根強い人気。

冬場に採れる日本古来のかぼちゃ
黒々した皮にごつごつとした独特のフォルム。昔から日本にあったかぼ ちゃを、今でも大事に育て続けているのが、宮崎 市生目地区のやまいきかぼちゃ部会です。繊細な甘みを持ち、きめ細かな口当たりで、長く煮ても煮崩れしないことから、「かぼちゃと言ったらこれ!」という根強いファンがいます。「かぼちゃ裁培で一番大変なのは脇芽を取っいく作業ですね。かぼちゃは横に伸びる作物で、最初のうちは地面近くで次々と出てくる脇 芽を全部取っていかないといけない。これが大変です」と語るのは部会の中で最も若い長谷川清さん。「かぼちゃは樹勢がいいだけでは花を付けない。そのため、定植をして一週間ぐらいは根付かせるために水をたくさん与えるけど、それから後、花を付けるまでは水を切ります」いかに花を咲かせるかが、勝負どころの一 つです。「かぼちゃは一つの枝に一個しか実を付けない。実を収穫した後にしか、次の実がならない。一個目を収穫して次の収穫までに、10日から20日 かかります。だから確実に実にするために、受粉も一つひとつ自分達の手でやっているんですよ」。収穫の時期は、12月から6月までの約7ヶ月ですが、一つの樹から5個ぐらいしか取れないという黒皮かぼちゃ。農家の人達の根気強さに驚かされます。

完熟しか出荷しない農家のこだわり
黒皮かぼちゃは樹で 完熟させてから収穫し、出荷しています。このこだわりに加えて、最近では低農薬を目指して、防虫ネットの使用や、病気の予防のために納豆菌由来のものを使うなど試行錯誤を続けています。また天敵農法も現在試験中です。「黒皮かぼちゃの規格では、果形が良くて傷がなく、熟度がいいものがA品です。完熟の判断は、見た目はつやがなく古そうに見えても、皮がつるんとしているもの」と 長谷川さん。美味しいかぼちゃの選び方を尋ねると、「栄養のバランスがいいからこそ、形のバランスも良い。だから形の良いもので表面が固く、見た目よりも重いもの」と教えてくれました。 一つ一つに時間が掛かるため、生産性は決し て高くありません。値段や労力を厩わず、人生をかけてかぼちゃ作りをしている農家もいるといいます。完熟と質にこだわる作り手に支えられ、黒皮かぼちゃのおいしさは守られています。


洋種かぼちゃ
ビニールをかぶせ、完熟を待つからこそ生まれるほくほく感。

かぼちゃのつるが水に浸からないよう高い畝に
米の後作として、洋種かぼちゃを作っている押川安友さん。押川さんの父親の代には黒皮かぼちゃを作っていましたが、その後、質の良いものが多く取れると洋種かぼちゃに転向。以来、40年近く洋種かぼちゃを作り続けています。押川さんは、地域で洋種かぼちゃを作り始めた先駆け的存在だときれます。押川さんのかぼちゃは田んぼに作るため、高く畝を作るのが特徴的です。かぼちゃは、排水不良や地下水が高いなどの多湿状態では疫病の発生が助長されます。いったん疫病にかかると、きれい に実がなっても、収穫してすぐに傷んでしまう。 だからこそ、トラクターで2回すき上げて高い畝を作ります」と押川さんは話します。また、稲を刈った後に 作るため、定植前の土には、籾を取った稲わらを細かく切り、籾殻も入れてすきこみます。するとふわふわの土になって酸素がいっばい入り、乾燥しにくく、根の張りも良くなるのです。「1月20日から25日ぐらいに種まきをして、40日ぐらい育てて定植します。定植前にある程度育てた方が、実のつき方が早くなるんです。苗も自分で育てているんですよ」。

毎年作る寒さ対策のビニールトンネル


かんしょ
砂地を利用して終戦直後から長年栽培。歴史ある産地で味を守る。

水はけが良くかんしょ作りに最適の土
宮崎市有田地区は終戦直後からかんしょ栽培を行っており、かんしょ栽培の適地として長年知られてきました。大淀川沿いに広がる平地のため、砂地で水はけが良く、ほくほくとして甘みの強いかんしょができます。父の代からかんしょ栽培をしている高橋和人さんも、そんな有田地区の水はけの良さを利用して、約1haの広さでかんしょを作っています。高橋さんの畑はどこも、大淀川が豊富な砂を大量に運んでできた土地のためか、ある程度まで掘っても砂や石が出てくるほど深い砂地で、水はけの良さは抜群です。「父親の代からかんしょを作り始め、私はかんしょを栽培して30年になりま す。砂地で育つから、市場に出しても『有田のいもは美味しい』と引き合いが 強いんですよ」と高橋さんは話します。この有田地区のかんしょは早期出荷が特徴です。3月の霧が降りなくなる頃から植え付けを行い、6月下旬に出荷を開始し ます。かんしょ作りで難しいのは、苗作りから定植するまで。ウイルス病に感染 すると、表皮がもろくなり退色することから、高橋さんはウイルスフリーの苗 を購入し、11月初めから2 月下旬まで、ビニールハスの中で苗を増やしていきます。 「定植する時期に霜が降りると苗が根付かない。付かないともう一度植え なおしです。根付くまでは気が抜けませんね」。

霜の時期を乗り越え 早期出荷を目指す
高橋さんはせん虫対策で土壌消毒を行ってから、畝作りをし、マルチ栽培で育てます。マルチを行うことで、地温が上がり早期出荷が可能になるのです。また、植え付けをするのは、 まだまだ霜が気になる時期。露地栽培のため、霜が降りなくなる時期を見計らって植え付けを行いますが、霜にやられないように4月頃までは苗に紙とガーゼが一緒になったものを被せておきます。「4月になって霜が降りなくなると、苗の上に被せた紙を取りますが、紙を 取ると苗が一気に大きくなった様子を見ることができて嬉しくなりますよ」 と話す高橋さん。雨が降ってもすぐに乾く土壌だからこそ、ある程度つるが伸びてくると、さほど手もかかりません。 現在有田地区でかんしょを栽培している農家は15軒ほど。70代から80代のべテラン農家が有田のかんしょ作りを支えてい ます。砂地を利用して長年かんしょ栽培をしてきた土地だからこそ、ほくほくとした甘みの強いかんしょが育つのです。


キャベツ
土作りを徹底して行い、歯ごたえ抜群のキャベツに。

稲作後に栽培するから消毒が不要
9月になり稲作を終えた田んぼ。多くの田んぼはまだ雨水が干上がらない中、児玉静雄さんの田んぼでは、ふかふかに漉き込まれた土にキャベツの苗が植えられようとしています。「いい作物を作るには 土作りが一番。私はいつもキャベツを作っていますが、そうできるのは田んぼの水をすぐに引かせる方法を知っているから。田んぼの後の土であれば、消毒の必要がありません」と児玉さん。児玉さんのキャべツ作りで一番のこだわりは土。田んぼを利用するのに加えて、稲作後の稲ワラを漉き込み、キャベツの甘みを引き出すために牡蠣がらを入れて土にカルシウム分を加え、牛糞、豚糞などが混ざった有機肥料を投入します。また、植える前に鶏糞も入れますが、この鶏糞も鶏に薬を一切使わない鹿児島の養鶏場のもの。土作りをしっかりした上で育てる からこそ、収穫の時に納得できるものができるのです。

キャべツのおいしさは理想の土づくりから始まる
児玉さんは農業機械に詳しい機械の達人でもあります。田んぼにトラクターを入れると、その重みで硬い硬盤層ができま すが、それを壊すのも育ちのいい土にするための秘訣だといいます。「硬盤層を壊して、水はけを良くすることで、雨が多くても根腐れしにくい土になります。また、土の天地返しにもなり、土がリフレッシュする。定植して75日程で結球しますが、それまでにキャべツが根をいっばい張るような土にすることが大事なんですよ」と笑顔で話します。結球が始まる前までに害虫が入らないよう目配りをしながら、最初の葉を大きくして結球させることもいいキャべツにするためのポイントです。児玉さんは苗の状態から収穫まで、栽培管理の履歴をパソコンに記録しています。農薬を使う際には作物の状態を見ながら、何を使うかを見極め て使うことで、農薬を必要最低限に抑え、安全・ 安心な農作物を提供できます。「キャベツは手で押さえてがっしりしているものがいい。また、株間を32cm間隔にして植えることで、消費者に最も求められる20cmサイズのキャベツを作るようにしているんですよ」と児玉さん。土作りにこだわって作られた児玉さんのキャべツは、シャキシャキとした歯ごたえがいいと評判です。


施設きゅうり
有機物を使い、土を柔らかく。根の動きがいいことが大事。

微生物が活発でほくほくした土を目指して
「うまいキュウリを作ろうとグループで取り組んでいるんです。独自の販路を持っているから、私の考えに賛同してくれる農家を集めて一緒に出荷しているんですよ。きゅうりはイボが命。このイボが取れるとそこから水分が抜けてしまう。イボが取れない元気のいいきゅうりを提供しているから、棚持ちがいいと評判なんですよ」と語るのは、矢野園芸の矢野治一さん。矢野さんのきゅうり作りは土作りが一番。矢野さんは土を作る際には、切りわら、米ぬか、ふすま、堆肥、油かすなどの有機質のものを沢山入れます。有機質のものは、土の中で腐食しながら微生物を活性化します。微生物が増えると土の質が良くなるため、定植後のきゅうりの根がよく動くようになります。マルチの中をほくほくした土にする。そうすることで、根が深いところまで入っていきます。よく動く良い根ができると、つるがピンと伸びて大きな花 を付ける健康なきゅうりの樹になるのです。「ハウスきゅうりは生育環境を調整できるから、病気や害虫が入りにくい。土作りをしっかりして、いい根を作ると、薬を使わずにきゅうりを育てることができるんです」。

花を見ると 実の良し悪しも分かる
矢野さんは、きゅうりの定植をする時期に合わせてきゅうりをどのような育て方で仕上げていくかを変えています。今年8月中旬に定植したハウスでは、摘芯栽培といって、芯を摘んで他のつるの成長を促進する方法を採用。10月に定植したハウスでは、つる下ろし裁培を行っています。 つる下ろし栽培は、1本のつるのみを約130cmのクリップの高さまで吊り上げ、日当たりや風通しを良くして品質の良いきゅうりを安定して取る方法。長期で収 穫するのに向いています。加えて、全体に日光が当たるようにわき芽取りや傷んだ葉を取り除き、きゅうりの状態に合わせて水やりや追肥など細かな管理も記録を取りながら行います。「花の段階で実の良し悪しは分かるんです。葉の緑色が薄くて、葉自体も薄くなってきたら元気がない証拠。きゅうりが風邪を引いていると言って、病気にもなりやすい。 だからこそ、風邪を引かないように土作りをしっかりやるんですよ」と矢野さん。植え付け前の土作りはもちろん、日々の細かな観察を経て、矢野さんが理想とする「イボがしっかりして真っ直ぐで丸さ もあるきゅうり」が収穫できます。


露地きゅうり
毎日の観察を怠らないことで見た目も味も良いきゅうりに。

病気を未然に防ぐ毎日の観察が鍵

「きゅうりは、子育てと同じ。毎日朝一番に、きゅうりの芽の状態、芯の状態を見ると、肥料が足りないのか、水分が足りないのかが分かる。子育てと一緒で、きゅうりを見れば、きゅうりがどうして欲しいのかが分かるんですよ」と語る坂元美好さん。長年ききゅうりを作っ ており、その経験から定植前の苗作りにもこだわりがあります。定植の3日前に苗を購入し、適度に水と風を当て自然に近い状態に慣らしてから定植する、というひと手間をかけています「3日間自宅で苗作りをするだけで、樹の状態がまったく違います。元気良く育つ。苗の時期で作物の結果の半分は決まると思っています」と坂元さん。坂元さんは、適度な 樹勢を保つために苦心を 摘むという、摘芯栽培を 行っています。坂元さんは、毎日樹の状態を観察することが何よりも大事だといいます。

細かな工夫で作業効率を上げ病気も防ぐ露地栽培のきゅうりは、9月中旬から12月上旬までがシーズン。きゅうりは湿度が多いと病気が入りやすく、秋の長雨のシーズンは1週間で状態が変化することから気が抜けません。「風が吹くと適度なストレスになって花がたくさんつく。そこに適当な量の肥料を入れると受粉が促進されます。勢いのいい茶心を摘むと樹の勢いが良くなる。葉が元気になると、葉を摘んで実の成長に勢いを付ける。全体の状態を見ながら、病気を出さないように、水と肥料のタイミングを考えるんです」と坂元さんは話します。坂元さんは、この地域で台風対策に防風ネットを取り入れた先駆者でもあります。適切な風は、きゅうりに適度なストレスを与えて成長を促しますが、強すぎる風は逆に樹を傷めます。「9月までは樹づくりが最も大切な時期。台風が来るたびに防風ネットを被せ、台風が過ぎるとすぐネットを取ります。それと、雑草が増えると病害虫が増えるので、雑草がないのは最低条件。樹を元気な状態に保つことで、まっすぐ美しいきゅうりが収穫できます。農家が培ってきた長年の経験に加えて、日々怠らない入念な観察と手入れを経て、形が良く歯ごたえの良い、色も味も濃いきゅうりとなるのです。


ブルームきゅうり
パリッとした歯ごたえ、強い香り。昔ながらの味わいが格別。

味の良さがアドバンテージになると信じて
佐土原の海岸にほど近い、松林に隣接した細川農園。ここでは現在市場ではめったにお目にかかれないブルームきゅうりを栽培しています。ブルームとは、植物が果実の乾燥を防ぐために自ら出すロウ物質のこと。一昔前までのきゅうりは、ブルームがついているものがほとんどでしたが、ブルームの白い粉を農薬とかん違いする人が多いことから現在はブルームのないブルームレスきゅうりが数多く出回っています。「ブルームきゅうりは鮮度を保つ力が強いため、皮が薄いのにいつまでも新鮮な味が楽しめます。また味が濃くブルームレスより美味しいと評価する人も多いんです」。 細川農園ではブルームレスきゅうりも一度は栽培しましたが、味はブルームきゅうりが上だと感じ、以来ブルームきゅうり一筋です。細川さんのこだわりは、少ない肥料で育てるということ。 5年前から肥料を減らし、植物が育つ段階に合 わせて必要な栄養のみ与えています。「人間の子供でも、いきなりステーキを食べさせても消化できません。植物も同じだと思うんです。成長するにしたがっ て要求する栄養分が違うから、必要な分だけ、成長段階や健康状態を見ながら与えています。農家にとって肥料を入れないと決めるのは怖かったけど」と笑いながら細川さんは話します。

健康な苗を作り摘果を減らす
必要な栄養を取り入れられる健康な樹にするためには、健康な苗作りが必要です。「苗半作」という言葉のように、苗の出来は裁培の成否に直結するので、植え付け後、畑の土となじむまでが勝負です。育苗時期は非常に気をつかいます。多くの農家では良い商品作りのために、最後まで摘果を行い良いものを残す育て方をしていますが、細川さんは摘果するものをなるべく作らないよう、肥培管理に重点を 置いています。「摘果して廃棄するのはもったいない。だから、曲がったものを出さないように、果肉に成長の違いが出ないように、全体に栄養が行きわたる管理を実践しています」と細川さん。機械など工業製品は完成まで時間がかからないが、人の食べるもの、命になるものは時間がかかる。命をつなぐものを生産し ていると細川さんは自負し、今日もきゅうり作りに取り組んでいます。


ゴーヤ
県内でも先駆けてゴーヤを栽培。経験に基づく土作りで自慢の味に。

自ら品種改良も手掛け試行錯誤
宮崎市佐土原町にある年居地区は、県内で最も早くからゴーヤ裁培を行ってきました。戦後、沖縄から移住した人達が持ってきた種を、この地域の人達が裁培したのが始まりだとか。この地域で、ハウスでのゴーヤ栽培を最初に始めたのが、斎藤貢さんです。
「ゴーヤは薬をほとんど使わないで栽培できます。だがら、田んぼをやめて作り始めたんですよ。田んぼに作っているから、水はけがいいように土作りをしていますが、ハウスだと雨 が防げられるから、病気や害虫のことはほとんど心配しなくていい。気を使う のは換気ぐらいですね」と語ります。
斉藤さんが物心付いたころから、年居地区では ゴーヤが露地栽培されていました。そしてその頃栽培されていたゴーヤは、長く曲がりやすいものばかりだったといいます。ちょうどその頃、鹿児島県で小さいけれどたくさん実を付ける品種があると聞き、斉藤さんは実を取り寄せ、 自ら品種改良して栽培したこともあるそうです。「今は大きいものが好ま れるから、自分が品種改良したゴーヤは作るのをやめてしまったけどね」と斉 藤さん。30年以上のゴーヤを作り続けてきた斉藤さんには、いろいろな試行錯 誤があったのです。

地域全体で工夫をして良いものを作る
「年居地区は、ほかの地域よりゴーヤの質と収量が良いといわれます。それは、地域全体で工夫して良い品を出すようにしているからです。連作しても収量がいいんです よ」と斉藤さん。たとえば、斉藤さんは、ゴーヤを長期で出荷できるよう工夫しています。今作っている品種は、花芽を多く付ける品種ですが、花芽を全部交配させると良い実が取れないため、摘果を行います。樹が疲れないよう樹を休ませながら、長く収穫するための調整を行っています。また樹が弱ってくると、実が子孫を残そうと働くため、見た目は熟れていなくても中の種が熟れているという状態になります。葉から栄養を与えるなど栄養管理も欠かせません。「理想のゴーヤは、黒っぽい濃い緑色で、全体的に色が均一で真っ直ぐのものがいいんです。また、この地域で採れるものは苦味が少ないと言われるんです。孫たちもゴーヤをよく食べますよ」と嬉しそうに話す斉藤さん。地域で守り続けてきた ゴーヤの味と品質の良さは、本場沖縄のゴーヤにも引けを取りません。


コールラビ
水管理が第一。日々の観察を行い味も見た目も良いコールラビに。

苗作りの時期の1ヶ月は気が抜けない
宮崎市清武町で新たな特産品として栽培されているコールラビ。珍しい野菜を作り、特産品とすることで町の活性化にならないかと、清武町観光協会が中心となって生産者を募集し、今年で5年目を迎えました。現在「きよちゃん大王ファーマーズクラブ」のメンバーは10名となり、栽培、出荷されています。「コールラビはかぶみたいだけど、繊維がしっ かりしています。見た目のおもしろさと味の良さで、清武町観光協会の事業として取組んでいます」と事務局長の石川奈奈美さん。コールラビは 別名"キャベツかぶ"とも言われ、苗の見た目は キャべツとほとんど同じに見えます。「コールラビは、苗の時の水加減が一番難しい。キャべツだったら100%発芽しても、コールラビは発芽するかどうか、作る人によって差が出る。苗作りの1ヶ月間は一番気が抜けないんですよ」と話すのは、会長の長友芳文さん。給水は多過ぎてもダ メだし、少な過ぎてもダメ。毎日、お天気の具合を観察をして、葉の状態を見ながらちょうどいい水やりを行うことが大事です。朝、曇りで昼から晴れると、朝と午後の水やりは変わりま す。それだけ水に敏感なコールラビだからこそ、 水管理が一番重要です。

南北に畝を作り日光をしっかり浴びさせる
コールラビは9月初めから中旬ごろに定植を始めます。60日程で育ちますが、秋口に植え始めるため害虫が比較的少なく、薬をそれほど必要としません。収穫は10月から始まり、5月末ぐらいまで。玉の大きさ8cm程度が収穫するサイズ。ま た、長い期間収穫できるように、植える時期をずらして、定植しています。コールラビは寒さにも強く、マルチ栽培し、地温をある程度保つことによって、露地で栽培できます。しかし、気温が低くなりすぎると低温障害を起こして花芽を付けることもあります。低温障害をどう防ぐかは、これからの研究課題です。また、特に朝日と夕日がまんべんなくあたるように南北に畝を作っています。「苗がうまくいけば後は大丈夫。ただ、成長段階で葉が取れると、取れたところから黒くサビたようになるので注意が必要です」と長友さん。
寒い時期にじっくりと太り、葉の状態を見ながらこまめな水管理で大きくなるコールラビ。宮崎の太陽と肥沃な大地が育むコールラビが人気者になる日も近いでしょう。


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