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河童の住む風景を後世に
古来より雄大で豊かな自然に抱かれる三股町。
河童伝承が語り継がれてきた風景を後世に伝えるために必要なことは何か。
町河川浄化等推進員会長に話を伺った。
2012年8月、環境省は「ニホンカワウソ」の絶滅を宣言した。かつて北海道から九州まで日本中に広く生息していたが、乱獲や開発による生態系破壊により姿を消したという-。ニホンカワウソは、河童のモデルと考えられている生物。かつて河童が遊んだとされる風景は環境破壊とともに消えゆく運命なのか?本町環境保護の現状について話を伺うべく、町河川浄化等推進員会長の大峰愿さんを訪ねた。
―大峰さんの子ども時代、河川にはどんな思い出がありますか?
「戦中、 戦後を通じて、 川は『遊び場』であると同時に『食料調達の場所』でした。また春の明け方に、近所の川で『ピーヒョー』とにぎやかに鳴く鳥がいて、それを聞くと『ガグレ(河童)どんの下くだり』だと家族でささやき合ったものです。 近年、川が舗装されてからは全く聞かなくなりましたが…」
―町河川浄化等推進員の仕事内容を教えてください。
「8人の推進員で毎月2回、町内河川や、ごみが不法投棄されやすい箇所を巡回するなどして監視活動を行っています。 私が活動を始めてことしで約20年になります」
―20年前と現在を比べて、本町河川の状況はどう変わっていますか?
「就任当初は不法投棄が多く、対応が大変でした。しかし、その後の『クリーンアップみまた』などの町全体による取り組みの結果、皆さんの意識が変わり不法投棄もだいぶ少なくなっています。また下水道整備が進んだことにより、実際に河川の水質も改善されています(表1参照) 」
―三股町の河川環境は良くなっているといえるのでしょうか?
「町内の一部では異臭がするなどの苦情が寄せられる箇所もあり、一概にそうとはいえません。 問題点もありますが、一方で光明も見えています。 理由は民間のボランティア団体・『霧島盆地のEM友の会』 (福ふく重しげ晴はる夫お会長)の活動が盛んなことです。 同会では、毎月1回、河川浄化に効果があるとされるEM団子やボカシを作っています。 団子は河川に投入、ボカシは生ごみ肥料化に役立てられています」
―近年、町内各地でホタルが観測されるようになっています。
「ホタルはきれいな水のある所にしか住まないといわれます。 皆さんの環境美化に対する意識高揚と実際の美化活動の結果、ホタルが帰ってきたと思います。 今後もこの流れを大切にしながら、さらにみんなで盛り上げていきたいですね」
心の中に息づく河童
慈しみと厳しさの両面を併せ持つ大自然への畏敬の念を抱きながら、太古の昔より人々は日々の暮らしを営んできた。そして人知を超えた事象に遭遇した際などに、河童をはじめとする「妖怪」の存在が口々に語られるようになっていく。
今回取材した南九州大学の矢口裕康教授によれば、そんな畏敬うべき存在に準らえて、昔の人は、家庭や地域社会で道徳教育を行った。そして親から子へ、子から孫へと何世代にもわたり広く語り継がれ、地域社会の不文律としてきた。 現代にまで伝わる民話・伝承には、そんな深い意図が込められているという。
河童伝承の土壌となった豊かな自然風景を守りながら、次の世代へ民話・伝承を語り継ぐ―。これが現代に生きる私たちに求められていることではないだろうか。
目を閉じて、河童のいる風景を想像してみよう。 三股町の豊かな自然の中、たくさんの河童が遊んでいる。 川で泳ぐ河童もいれば、相撲をとる河童もいる―。
河童は、人々の心の中に今もしっかりと息づいている。
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