[綾町には染色に欠かせない
美しい水があった
秋山眞和]
伝統をいったん壊し、
その精神は残しつつ、
新しいカタチにすることが大切
黒木 国昭
ガラス工芸作家・黒木国昭。尾形光琳をはじめとする琳派の繊細かつ豪華絢爛(けんらん)な世界をガラスアートで再現した「琳派シリーズ」など、卓越した技術によって生み出される作品は、世界から高い評価を得ている。
そんな彼の代表作のひとつである「綾切子」 。世界初の多色切子として不動の人気を誇るこの作品は、綾町の照葉樹林をテーマにしたものだ。
「私の作品は一貫して、日本の歴史や美、文化、風土を表現しています。綾切子は、何千年にもわたって命の循環が繰り返される壮大な照葉樹林をいかに表現するかを徹底的に追求して生まれたものです。
綾町の素晴らしさを表すだけではなく、環境問題への警鐘 を鳴らしてもいるんですよ」と語る黒木。
50年を迎えた彼の作家活動の原点となっているのが、今を生きる作家として、何を訴えたいのかという思いだ。黒木は言う。「伝統を引きずっているだけでは駄目。伝統をいったん壊して、その精神は残しつつ、新しいカタチにすることが大切だと考えています」。
決して色あせることのない、ガラスアートは、100年後、200年後の人々に何を訴えかけるのだろう。
綾町には染色に欠かせない
美しい水があった
秋山眞和
染織家・秋山眞和が主宰する「綾の手紬染織工房」 。養蚕から染色、織りまですべての工程を行う日本で唯一の工房だ。
沖縄で生まれ育った秋山が綾町に工房を開いたのは、染色に欠かせない美しい水があったのと、「綾」という町名が、織物にかかわりのある美しい響きだったからだ。
「藍染に使う使う灰汁(あく)には、照葉樹林の木灰を使っていますし、すべての工程において化学薬品は一切使っていません」と秋山。世界初の還元建て染め「大和貝紫染め」や自身のルーツ・沖縄の伝統的な「花織り」など多彩な技法を用いて、綾町独自の染織物を創作している。
工房を立ち上げて以来、一貫して天然染色を行う秋山。
「天然染色にこだわるのは、染める原料に意味があるからです。例えば、紫草には血行を良くして温める力がありますし、藍で染めたものは火に強くなるんです」 。2008年には天然灰汁発酵建ての藍染め技法が、綾町無形文化財に指定されている。
変わりゆく時代に合わせて何ができるのかを試行錯誤しているという秋山。染織文化を守り続けながら、新たなものづくりへの挑戦が続く。
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