読売巨人軍がV9という金字塔を打ち立てた試合を始め、モハメド・アリが聖火台に灯をともしたアトランタオリンピック、箱根駅伝、ゴルフなど、抑揚のある渋い声でスポーツ史に残る名シーンの数々を伝えてきた名アナウンサー、小川 光明さん。
現在、宮崎に住む小川さんに移住した経緯、仕事でのモットーなどについてうかがいました。
[【Q1】現在、小川さんは宮崎に居を構え、東京などでお仕事をされていますが、宮崎に移住しようと思われた経緯についてお聞かせください。]
読売巨人軍がV9という金字塔を打ち立てた試合を始め、モハメド・アリが聖火台に灯をともしたアトランタオリンピック、箱根駅伝、ゴルフなど、抑揚のある渋い声でスポーツ史に残る名シーンの数々を伝えてきた名アナウンサー、小川 光明さん。<br /> 現在、宮崎に住む小川さんに移住した経緯、仕事でのモットーなどについてうかがいました。<br />
フリー・アナウンサー 小川光明さん
Profile
1940年生まれ、東京都出身。東京都立赤坂高等学校、中央大学法学部卒。 1962 年、日本テレビ( 日本テレビ放送網株式会社) にアナウンサーとして入社。以来、プロ野球、箱根駅伝、ゴルフ、ボクシングなど、さまざまなスポーツ番組の実況を担当。また、1996 年に開催されたアトランタオリンピックでは、開会式の聖火点灯セレモニーの実況も務める。
2000年に定年退職を迎えたあとも、同局に慰留され留任。 2004 年5月に行われた東京読売巨人軍の実況を最後に、42 年に及んだ日本テレビでのアナウンサー歴に終止符を打つ。現在は『ボウリング革命P☆LEAGUE』(BS日テレ/UMK) 、毎年5月に開催される『日本車椅子バスケットボール選手権大会』(スカイパーフェクTV!)などの実況を担当。趣味はゴルフ、野球観戦、食べ歩き。好きな言葉は「粋に、優雅に」。
【Q1】現在、小川さんは宮崎に居を構え、東京などでお仕事をされていますが、宮崎に移住しようと思われた経緯についてお聞かせください。
【A1】
私がアナウンサーとして、日本テレビに入社したのは1962 年のことですが、以来、ニュース、ナレーション、ゴルフ、箱根駅伝、ボクシング、バレーボールなどいろんな番組に携わってきました。中でも、主ということで言えば、野球中継… … 巨人(東京読売巨人軍)戦になります。ですから、50年前からキャンプの取材で、毎年宮崎を訪れていまして。
当時は報道陣もいまほど多くはなかったので、我々マスコミも外野を守ったり、内野のそばで球拾いをしたり(笑)。選手とも、よく食事に行くこともありましたが、現在ほど規則も厳しくはありませんでしたから、まあ、いろんな武勇伝も目の当たりにしましたね(笑)。
また、我々自身も他局のみなさんと連れ立って「選手がキャンプで鍛えているんだから、アナウンサーも発声練習をしなくてはいけない」と、よくカラオケをしに、夜の街に繰り出していました( 笑)。そういったさまざまなことも含め、宮崎での日々は、私にとって非常に楽しいものでして。キャンプ取材の際は、少し休暇も加えて、長めに宮崎に滞在していたくらいです。
宮崎の、なにがそこまで私を惹きつけたのかと言えば、まず宮崎の人たちの人柄。本当に、宮崎で知り合った人たちは、いい方ばかりです。そして、住むことを考えたときに、温暖で物価が安い。さらには、私の大好きなゴルフ代も安い(笑)。ノンビリするには、非常にいいところだなと思いまして、5年前に東京の自宅を引き払って、宮崎に移住しました。
【Q2】巨人軍が日本シリーズでV9を達成した試合を始め、スポーツ紙を彩る、さまざまな劇的シーンに立ち会われていますが、実況をされる際に気をつけていることとは?
【A2】
一例を挙げると王(貞治)さんだと、ベーブ・ルースの記録を抜いた715号ホームラン。それから、ゴルフで言えば、青木(功)選手が日本人で初めて、アメリカPGAツアーで優勝したハワイアン・オープン。あとは、いろんな選手が復活を遂げた試合も、よくやっていますね。吉村(禎章)選手が大ケガから、また桑田(真澄)選手がヒジの手術から復帰を果たした試合なども担当しました。
実況で心がけていることは、いろいろとあるんですが、解説者のみなさんから、どれだけ視聴者の興味を惹く、いい話を引き出すか。この点には、かなり心を砕いてきました。例えば、ホームランが出た場面ではアナウンサーも「行ったー、豪快なホームランー」と声を張り上げますが、これはあくまでも、状況を伝えるためのBGMであり、実況は脇役にしか過ぎません。
大切なことは、そのホームランが試合をひも解く上でどのような意味を持っているのか、あるいはバッテリーとの間でどんな駆け引きや技術が駆使されたのか、その選手の成長をはかる上で、このホームランはどんな意味合いと持つのかなどを、解説者からわかりやすく聞き出すことです。
【Q3】小川さんが仕事をされる上でのモットーは「いい仕事をするには、遊び心がないといけない」ということだそうですね?
【A3】
これは先輩から教わったことでもあるんですが、ご飯を食べるにしても、夜の街に行くにしても、なるべく一流のお店を選ぶようにしなさいと。そういったお店の技術であったり、気配りであったり、発想法や仕事へのこだわりなどに触れることは、アナウンサーに限らず、いろんな仕事をする上でも役に立つと思います。また、一流のお店に行けば、当然お金がかかります。つまり、必然的に仕事も一所懸命やらなくてはいけなくなる、ということでもあるんです(笑)。
私は50年以上、この仕事を続けていますが、それでも「今日の実況はよかった。満足した」と感じたことは一度もありません。取材で得たすばらしいエピソードをたくさん放送に織り込めたから、いい実況ではないですし、明日はトーンを変えよう。今日はあそこで語尾が上がり過ぎていたから直そう。あの選手の話を多めに入れようなど、いくらでも改善点はあるわけです。少しでも前に進むために、毎回違ったことにチャレンジしてみる。その向上心のベースにあるのは、仕事における遊び心です。私は箱根駅伝の実況にも携わらせてもらいましたが、この中継を始めた日本テレビのプロデューサー、ディレクター、技術スタッフは、本当に情熱にあふれたすばらしい仲間でしたね。いまでこそ、箱根駅伝はお正月には欠かせない、日本の風物詩になっていますが、当時はあまり認知度が高くない大会でした。
それを1月の2日、3日各7時間ぶっ続けで放送する。また、箱根の山を登り降りするわけですから、中継の技術的な面でも課題が山積していました。各局があきらめていく中、唯一日本テレビだけがいろんな課題をひとつずつクリアーして、中継にこぎつけたわけです。その根底にあったのは、「この仕事を成し遂げる」という熱い想いと「もっとおもしろいことをやりたい」という、ある意味での遊び心だったのではないでしょうか。これからも、大好きな宮崎をホームタウンとして、遊び心を忘れずに、仕事に遊びにマジメに取り組んでいきたいと思います。
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