▲宮崎県伝統工芸士 兵頭 正一(ひょうどう まさかず)さん
父親の後を継ぎ、佐土原町に古くから継承される伝統工芸品を次世代につないでいく
活動を続けている。佐土原町伝統的工芸品保存会で講師としても活動中。

宮崎市で輝いている人を紹介する「キラリ!宮崎人」。今回は、佐土原町で伝統工芸品を作り続ける宮崎県伝統工芸士の兵頭正一さんです。

父親の後を継いで木工の道へ

[昔は身近だった玩具]

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父親の後を継いで木工の道へ

久峰観音に伝わる縁起物「久峰うずら車」と、竹でできた「神代独楽」。

佐土原町に代々伝わるこれらの伝統工芸品を守り継ごうと、8人の作り手からなる佐土原町伝統的工芸品保存会では展示や絵付けなどのイベントを随時行っています。

県の伝統工芸士である兵頭正一さんもその1人。
木工を手掛ける父親の作業を、小さいころから手伝っていたそうです。

「幼いころから竹を削ったり、ヒノキのふたを削ったりして手伝わされよったんですわ」と当時を振り返って笑う兵頭さん。
亡くなった父親の後を継ぎ、70年以上も伝統工芸品を作り続けています。


昔は身近だった玩具

「神代独楽」はまず、竹の筒の上下にヒノキ板を削ったふたをはめ込み、側面に風切り口を作ります。
筒には回転する独楽が安定するよう竹の心棒を通して、家紋など模様の入った和紙を貼ります。
最後に松の木の根でいぶし焼きにし、黒々と色付けすれば完成です。

回すと、ブーンと勢いよく音を立てるのが特徴で、
兵頭さんによると「竹の乾燥や、ヒノキのふたが密閉できているかどうかで、音の鳴り方や大きさ、回り方が違うんですよ」とのこと。

江戸時代には参勤交代の土産物として献上されていたそうですが、兵頭さんにとっては小さいころにどの家でもみんな作って遊んでいた、身近な玩具なのだそうです。


一方、「久峰うずら車」は、キジ科の鳥・ウズラを模した縁起のよい玩具。
タラの木の皮をはぎ、白い木肌の胴体に竹の軸を通して、松を輪切りにした車を付け、絵付けをすれば完成です。

雄雌で一組になっているのが特徴で、昔は地元の久峰観音や鬼子母神社の祭りで売られていたそうです。


数百年の歴史を絶やしたくない

伝統工芸品の継承に取り組んでいる保存会ですが、兵頭さんは80歳。
他の会員も高齢となり、長い間受け継いできた伝統が途絶えてしまう危機にさらされています。

「神代独楽も久峰うずら車も、佐土原に数百年前から伝わる大切な宝物。ここで終わらせちゃいかん、何とか残していかにゃ、という気持ちで取り組んじょるんですよ」と、兵頭さんは静かに語ります。

春休みや夏休みになると、地元の小学生たちが「兵頭さん、独楽の作り方教えて!」と集まってくるとのこと。
兵頭さんはそのたび、庭先にブルーシートを広げ、小学生たちに竹の皮でできた飛行機や、独楽の作り方を教えているそうです。

「ぼくらの子どものころもこうして遊びながら作り方を覚えとった。この子たちが受け継いでくれるなら、こんなにうれしいことはないわね」

一緒に工作をした子どもたちの中から、いつか作り手が生まれてくれることを願いながら、兵頭さんは今日も伝統工芸品を作り続けます。


注目!

市広報みやざき 2017年4月号

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