「キラリ! 宮崎人」。歴史書や写真集の監修・執筆、文化財保護などの活動を通じて郷土の歴史や文化の継承に尽力する、甲斐亮典さんです。

知識と人格を兼ね備えた二人の恩師との出会い

[人に会い、聞き、感じる、大事なものは教室の外に]

知識と人格を兼ね備えた二人の恩師との出会い

 兄の本を借りたり、通学中も読書にふけるなど、幼い頃から本が好きだった甲斐さん。現在もたくさんの本や資料を読み解きながら歴史書などの監修・執筆に取り組んでいますが、その考え方や姿勢のルーツは、二人の恩師との出会いにあるそうです。
 一人は、高千穂農学校在学中に出会った柳宏吉先生です。「県の要請で東大から来られたすごい方なのに、私たちのような子どもにも礼を尽くしてくれる人格者でした」。もう一人は宮崎大学時代の恩師、杉田正臣先生。「私利私欲がなく、高潔で学問に一途という、こちらも素晴らしいお手本でした。書生として住み込んだので、生活面でも随分お世話になりました」


人に会い、聞き、感じる、大事なものは教室の外に

 杉田先生から「先生というのは長話をするもんじゃない」と教えられていた甲斐さん。それを受け、宮崎東中学校長時代は原則3分程度で講話の原稿を作成していました。「“走れメロス”や“心に太陽を持て”など、生徒に分かりやすいテーマを探して話をしました」という講話は生徒に好評で、全員に紙でも配られることに。退職の際にはその講話をまとめた本を甲斐さん自ら1000冊作り、生徒や職員に渡したそうです。甲斐さんは「全て先生の教えですよ」と笑います。


勉強とは上を見ず、粘り強く地をはうようにするもの

 恩師の教えを通じて、甲斐さんが気付いたこと。それは、勉強とは上を見ず、粘り強く地をはうようにするもの、ということでした。「歴史の文献や古文書を地道に読み解いたり、現地に赴いて人に会い、生きた情報を得るには粘り強さが必要です。でも、そうして勉強して、初めて本物に出会えるんだと思います。大事なものは教室の外にあるんですよ」


 甲斐さんが山里に住む人々から聞き集めた話をふんだんに盛り込んで執筆した最新の書籍は『ふるさとの伝説』がテーマ。カッパや蛇の化身などというと作り話のように思えますが、時期や場所などに不思議な具体性があるとのことです。「目には見えないけれど、山里の人々が心の中で確かに感じたものが背景にあるようです。ふるさとを忘れないためにも、大切に残したいと思って書きました」
 本紙2ページで連載中の「みやざきタイムマシン」は、7月号から甲斐さんが監修しています。「昔の写真には、当時の暮らしの大変さや苦労も表れています。懐かしむだけでなく、積み重ねてきた歳月の重みも、ぜひ感じてほしいですね」


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上を見ず、粘り強く、地をはうように。勉強とはそういうものだ 写真

miyazaki ebooks編集部

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