民宿山水を営む猿渡さん夫妻。その温かな人柄に、自然と人が集う。

「綾町を訪れた人に少しでも楽しんでもらいたい」

[スポーツ合宿を
支えて25年]

宿

「綾町を訪れた人に少しでも楽しんでもらいたい」

 照葉樹が茂る山のたもと清らかな水が流れる綾川渓谷の入口にたたずむ宿『民宿山水』。
「うちから〝おもてなし?という言葉を取ったら何も残らないよ!」と、屈託のない笑顔で話すご主人・猿渡克仁さんの言葉どおり、お客さんへの細やかな心遣いとおいしい川魚料理が自慢の宿だ。
 今から42年前、滋賀県から移り住んだ両親が始めたアユの養殖場がスタートだったという山水。現在は、克仁さん・真実さん夫妻、それと克仁さんの両親の4人で、宿と養殖場を切り盛りしている。


スポーツ合宿を
支えて25年

綾町は気候もよく、 スポーツをする環境が整っていることから、Jリーグをはじめ多くのチームがめ合宿に訪れる。山水でも、宿を始た25年ほど前からスポーツ合宿を積極的に受けいれており、当時から毎年のように訪れているチームもある。
「大阪大学準硬式野球部には毎年利用してもらっているんですよ。うちは朝、昼、晩の3食すべてを提供するのが特徴で、昼は球場まで弁当を届けるようにしています。せっかく大阪からやって来てくれるんですから、おいしい物をたくさん食べて、思う存分練習してもらいたいですからね」と克仁さん。綾町での合宿が伝統となっている学生たちにとって、猿渡夫妻は「綾のお父さん、お母さん」なのだ。


食べ物の
ありがたさを
伝える

 猿渡さんは、子どもたちに“命をいただいて生きているという”ことを学んでほしいと、幼稚園やイベントを行っている。
 「僕たちと同世代で、魚をさばくことができない人がたくさんいることを知ったのがきっかけです。子どもたちに生きていくための知恵をしっかりと伝えなければ、現代の子どもたちが大人になったときがとても心配だと思ったんです。
 逃げ回るニジマスをどうやったら捕まえられるのか。そこを自分で考えて工夫することがとても大切です。 捕まえたニジマスのわた抜きを園児にさせている幼稚園もあるんですよ。 命をいただいて私たちは生きていること、だから食べ物がどんなにありがたいものかということを学べる貴重な体験ですよね」。


喜んで
もらえるのが
うれしい

 克仁さんは綾町を愛する人でつくるグループ 『綾夢楽人(むらびと)の会』の一員として、町の活性化にも一役買っている。綾町では年間を通じて数多くのイベントが行われており、そのほとんどに参加しているのだ。そこには綾町を訪れてくれた人にもっと楽しんでいってほしい、という強い気持ちがあるという。
 克仁さんはまた、毎週のように 宮崎県内各地で行われる朝市に出店し、アユの塩焼きを対面販売している。「私たちが丹精込めて育てたアユを食べて喜んでくれるお客さんの笑顔を見るのが何よりうれしいから」 と語る克仁さん。その気持ちは、山水のスタッフ全員が共有しているもので、そこから自然とあふれ出すもてなしの心が、この宿のなによりの魅力なのだ。


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