自然、神話、文化…宮崎がぐっとつまった青島
宮崎市中心部から南へ約20㎞に位置している青島。島内には亜熱帯植物27種類を含む約200種類が生育しており、中には樹齢300年を超えるものもあると言われています。
[神話の舞台 青島]
自然、神話、文化…宮崎がぐっとつまった青島
宮崎市中心部から南へ約20㎞に位置している青島。島内には亜熱帯植物27種類を含む約200種類が生育しており、中には樹齢300年を超えるものもあると言われています。
大地のドラマ青島
一般に「鬼の洗濯板」と呼ばれる奇岩は、宮崎平野の基盤となる岩相で、宮崎 層群と呼ばれます。この宮崎層群は砂岩と泥岩の互層構造になっており、 元々は海底に水平に堆積していた堆積岩で、約8OO万年前~約250万年前に生成されたものと言われています。地殻変動で、青島を含む宮崎平野の一部に海底の隆起が起こり、この辺りに露頭する宮崎層群は、一定の走向傾斜を示しています(画像①②)。この泥岩は風化に弱く、潮汐の影響を受けてけずられ、比較的風化に強い層の砂岩との互層が、「鬼の洗濯板」を生み、大自然のドラマをみせています。
神話の舞台 青島
平成24年は日本最古と言われている歴史書「古事記」が編纂されてから1300年目の節目となった年でした。古事記は、現在の日本が形成されるはしりとなる「国産み」が記されている上巻、初代神武天皇から第15代応神天皇までが記されている中巻、第16代仁徳天皇から第33代推古天皇までが記されている下巻の3巻で構成されており、上巻に記されている神話の半数以上は、ここ宮崎が舞台になったと考えられている日向神話で占められています。
宮崎県内各地では「神楽」が舞われます。これは、豊作・豊漁の祈願や、神に対する感謝の意を表現したものです。豊作豊漁以外にも雨乞いや御日待ちなど、様々な祈願があり、これらの神楽は、天照大神が天岩戸にお隠れになった際に、天照大神を外に出そうと他の神々が舞ったとされる、御日待ちのための神楽が起源と言われています。さて、日向神話の中で、ここ青島が舞台となっている神話が海幸彦と山幸彦の兄弟の神話です。瓊瓊杵尊と木花咲耶姫の間に授けられた海幸彦と山幸彦は、兄である海幸彦が命より大事にしていた釣り針を、弟の山幸彦が無くしてしまい、兄弟喧嘩をしてしまいます。無くしてしまった釣り針が見つからないため途方に暮れる山幸彦の前に現れた塩筒大神は、「船に乗って海の神ワタツミの宮」へ行くように導きます。ここでワタツミの宮に住む豊玉姫と出逢い、結婚。その後、山幸彦は、海幸彦の釣り針を返すために陸に戻りますが、この兄弟は幾度となく争いを繰り返し…と神話は続きます。ところで、山幸彦がワタツミの宮から陸に戻った際に上陸した場所…それが青島だと言われています。青島の中央南岸に位置する青島神社は、縁結び・安産・航海安全の神様と言われており、御祭神には、山幸彦と豊玉姫、そして塩筒大神が祀られています。
祭礼にみる 青島
青島地区では、昔から伝わる祭事がいくつかあります。その中でも著名な祭事が夏祭の、"海を渡る祭礼"と冬祭の"はだかまいり"です。 海を渡る祭礼は旧暦の6月に17?18日に開催されます。元々は江戸時代中期に始まったとされる「浜下り」という青島地区に伝わる祭事から派生したもので、青島神社の神興が町の中を二日間にわたり練り歩くものでした。神輿を載せた御座船が大漁旗などで荘厳に、また華やかに装飾された漁船20数隻を従え、青島の周囲を周る"海上渡御"を行うようになったきっかけは、海幸彦と山幸彦の神話に由来します。
もう一つの祭事。"はだかまいり"はニュースなどで目にした方もいらっしゃると思います。男性はふんどし・はちまきに白足袋、女性はさらしにじゅばん、 はちまきに白足袋。南国とはいえ厳寒1月の宮崎の海での祭礼に毎年、多くの方が参加されます。この祭りの起源もやはり、海幸彦と山幸彦の神話に基づいており、山幸彦が青島に帰って来た際、村人が着物を着る間もなく、はだかでお出迎えに出たという話が起源と言われています。ちなみにこの山幸彦、初代天皇である神武天皇の祖父にあたるのは有名な話ですね。
新婚旅行の地 青島
さて神話に伝承されたこの地は、昭和40年代に新婚旅行先として人気を集めていましたが、青島はまさにその中心でした。昭和35年に新婚旅行で島津久永・貴子(昭和天皇の第五皇女)夫妻が青島を訪れ、翌々年の37年には天皇皇后両陸下(当 時は皇太子皇太子妃)が来県したことで青島と日南海岸は「プリンセスライン」と呼ばれ、全国で一番有名な場所となり空前の新婚旅行ブームを起こしました。
味わう 青島
観光地となった青島の名物が「青島ういろう」。宮崎の人なら誰もが知っている青島のういろうは、明治の初めころまでは、お茶菓子として家庭で作られていたようです。その原材料は、今の時代の様に小麦粉が容易く手に入る状況ではなかったため、専ら米粉だったとか。折生迫で小さな旅館を経営していた鈴木サトさんも、旅館の宿泊客に、地元に伝わるもち菓子を自分で作ってお茶請けとして提供していました。
その当時は、似たようなものが多かったのでしょうが、それでも甘物は高価で貴重なもの。美味しいと評判を聞けば、すぐに購入し、美味しければ味を真似てみたり、包み紙を工夫したりと、この鈴木サトさんの努力が現在の青島の味の原型になったと言われています。
舞台で味わう 青島
今年度は、宮崎市誕生90周年の年です。そこで宮崎市制90周年の記念イべントと して宮崎市民プラザ オルブライトホールにて宮崎の自然・文化・人を題材にし た演劇公演が上演されます。
演出、脚本は宮崎県日南市出身の脚本家中島敦彦氏。ゲスト俳優に同じく宮崎県出身の井之上隆志氏。その他出演者も宮崎で活躍する劇団員15名で構成するという、made in宮崎の演劇です。
ここで内容を少しご紹介します。人は生命を全うするとあの世へと向います。いろんな事情で自分の死に気付かない人もいます。そんな人たちが暮らす小さな島があるそうです。そこは、生きていることを信じている人たちが暮らす波の上に浮かぶ小さな青い島。人はなぜこの世に生まれ、何を残し死んでいくのか。不器用にしか生きられない人間の可笑しさ哀しさ。サトの人生を物語の軸に、人の世のあれこれを虚実取り混ぜ賑やかに描いていきます。ういろうのように甘く、海風のように少し塩っばい、故郷宮崎のファンタジーです。
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