結婚してから20年以上、綾の地で豆腐をつくり続ける徳丸さん夫婦。その想いを伺った。
[国産大豆、 天然にがり、 それに綾町の水、ただそれだけ]
結婚してから20年以上、綾の地で豆腐をつくり続ける徳丸さん夫婦。その想いを伺った。
おいしい豆腐をつくることが私たちの恩返し
静寂に包まれた、夜明け前の綾町。その一角にある店の灯りが地面を照らし、まっ暗な空に吸い込まれるように湯気が立ちのぼる。
徳丸健一 さん・美保子さん夫婦が営む 『徳丸豆腐』 は、175年の歴史を誇る豆腐店だ。 開店前から、豆腐が出来上がるのを見計らって、常連のお客さんが次から次へとやってくる。 徳丸豆腐では基本的に小売りをしていないため、「風味がぜんぜん違う」と健一さんが言う、出来立ての豆腐を味わえるのは、ご近所さんの特権なのだ。
国産大豆、 天然にがり、 それに綾町の水、ただそれだけ
徳丸さん夫婦がつくる豆腐に使われているのは、国産大豆、 天然にがり、 それに綾町の水、ただそれだけ。豆腐の製造工程で一般的に使用されている消泡剤をはじめとするほかの成分は一切含まれていない。 だから素材の特性が、ダイレクトに豆腐の味わいにかかわってくる。
ただひとつ変わらないもの。それは綾の「水」。
健一さんの祖母が創業して以来、大豆の品種をはじめ、さまざまな試行錯誤が繰り返されてきたが、この間、原料の中でただひとつ、変わらないものがある。豆腐の「命」とも言える水だ。
「お茶も、入れる水によって味が変わってくるじゃないですか。
豆腐も同じです。綾の水はとてもまろやかで、体にすーっと入ってくる感じがするんです。大豆にもよく浸透していくんですよ」 と健一さん。綾町の名水は、徳丸豆腐の味わいの根幹をなしていると言っても過言ではない。
夫婦二人だけで
現在、国産大豆だけを原料に用いている徳丸豆腐。 しかし、健一さんが父の跡を継いだ当初は、アメリカ産の大豆も使っていたという。
「アメリカ産の大豆を仕込み水に浸すと、泡が沸いてくることがあったんですよ。 国産だとまったくそういったことはありません。なにか気持ちが悪くなって、外国産の大豆を使うことに抵抗を感じるようになったんです。それからは、とにかく国産の大豆だけを使うようになりました。これに関しては、親父と大げんかしましたよ。なにせ国産大豆は高くて、コストがかかりますから。今、こうして国産大豆100%でつくれているのは、夫婦二人だけでやっているからなんですよ。その分、つくる量は限られてしまいますが」。
豆腐で伝える 感謝の気持ち
健一さんは原料へのこだわりの理由をこう話す。
「まちのみなさんの多くの支えがあって、今の私たちがあるんです。その恩返しとして、私たちにはおいしくて安全な商品をつくる使命があると思っています」と言う徳丸さん夫婦。二人三脚で丹精する豆腐には、その想いがぎっしりと詰まっている。
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